「またウニか」

食べ歩き ,

「またウニか」。
ウニを出されると、うんざりする自分がいる。
嫌いではない。好物である。

「わぁー、ウニ!」 喜ぶ周囲に囲まれながら、しらけている自分がいる。
あらゆるジャンルの料理で、こんなにウニが出されるようになったのは、いつからだろう。

ウニは美味しい、
甘美な食感は、人の心を溶かす。
しかし大抵の場合は、「ウニはいらないんではないか」と、食べながら思う自分がいる。

昨日も江戸川橋「TXOKO」でもウニが出された。
加熱された玉ねぎの上に、上質な塩水ウニがたっぷりと盛られている。
しかし、目の前で盛り付けていく関口シェフの仕草を見ながら、一つの確信があった。
これは違う。
ウニは主役ではなかった。
主役は玉ねぎで、その主役を食うこともしない。
じっくりと火を入れられ、芯部だけを盛られた玉ねぎのピュアな甘みが流れる。
その玉ねぎのピュレもまた、澄んだ甘みがあって、一瞬にして自分が玉ねぎと同化したかのような喜びがある。
玉ねぎの持ち味を、ウニのエロスがそっと持ち上げる。
純真は守りつつ、ひっそりと色香を漂わす。
ハーブソースが爽やかな香りで、アクセントを添える。
玉ねぎ、ウニ、ハーブという三者が、互いに微笑み会いながら共鳴している。
なにを見せたいかではなく、なにを食べせたいか。
なにを感じさせたいかが明確な、哲学がある料理である。
まあそんなことまで思わなくても、純粋に甘い夢に浸れる料理である。
食べさせたいなあと思う人の顔が、次々と浮かんできた。
そして。
女性を口説ける料理である。
アミューズからやられてしまった、江戸川橋「TXOKO」のセンスに富んだ全料理は別で。
一番打ちのめされたのは、カボチャのニョッキです