お椀は、牡丹ハモだった

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お椀は、牡丹ハモだった。 牡丹ハモといえば、最近は梅雨時期や梅雨明けが多い。 しかし本来は５月初旬のお椀だという。 脂がまだのっていない鱧は、舌の上……

「お造りは、めじまぐろとさよりをいただけますか」

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「お造りは、めじまぐろとさよりをいただけますか」。 「はい」。 銀蔵さんは、いつものように魚を取り出し、刺身を造る。 分厚いサヨリにサクリと歯が入り、めじ……

唯一無二の割烹

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２４回、驚きの声を上げ、２４回、充足のため息を漏らした。 世界のどこにもない。唯一無二の割烹である。 その２４皿は、すべてが初めて出会う料理である。 ……

太刀魚は焼かないと甘みが出ない

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「太刀魚は焼かないと甘みが出ない。しかし焼きすぎるとぱさぱさになってしまう。そこを一工夫しています」。そう神田さんはおっしゃった。 太刀魚の下に太刀魚の子や……

プリッ

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プリッ。 まだ雪の残る土から掘り出された新春の筍は、か弱き歯触りを見せる。 最盛期のりりしい食感にはいたらぬつたなさが、胸をくすぐる。 木の芽和えも……

銀座バードランド

親子愛。

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僕は親子丼を目の前に出されただけでにやついて、だらしない顔になってしまう男です。 それは無類の鶏肉好きで卵好きという理由もありますが、この丼に親子の情を感じる……

出町柳「御所雲月」のお昼ご飯。　　＜京都の平生＞18

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柳鰈の身は、ほんわりと甘く、皮はパリッと香ばしい。 ひろうすの有馬煮、蕗と椎茸、百合根の白和え、麩と菜の花の酢みそかけ、温泉玉子の胡麻ソース。細切り人参と筍の……

フグは生きていた

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フグは生きていた。 うっすらと飴色が刺した刺身を、一枚口に放り込む． 噛め。私を食べろ。 その瞬間、フグが呟いた。 ゴリコリッ。ゴリコリッ。 ……

還暦の祝い

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還暦の祝いで、湯木さんが「かぶと焼き」を用意してくださった。
 まだ大海の中で、生きていかんとしているような気配を残した、見事な火の通しでで、鯛は舌の上で爆ぜ……

甘鯛

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「今日はいいアマダイがはいりました」。
 そう言って森川さんは、堂々たる体躯の甘鯛をまな板にのせた。 
一塩されて運ばれた甘鯛は、自らの体を誇るかのように輝……