「SNSにはあげないでね。このタルタル。なま肉だから」。そう言って、山田シェフはいたずらっ子の笑顔を浮かべた。
「ああ。おいしい。でも肉入ってるのかなあ?」
「入ってるよ。ほらくにゃっとした」。
ビーツの優しい甘みに包まれたタルタルが、心を和らげ、食欲をくすぐる。
「入っていません。これ野菜だけです」。
また山田シェフが現れて、嬉しそうに笑う。
この夜は、さる方の還暦祝い。
シェフが、ひねりを効かせて赤づくし。
前菜のタルタルに始まり、デザートのスフレも赤を使う。
オマールのカタラーナも素晴らしい。
粉物好きの主役のためには、トマトソースで60と書いたラザニアを。
奥様がラザニア上手なので、頼んでみたのだが、一口食べた主役の方は、
「あ、これ家内の味とおんなじだ」。
すばらしい。僕も食べて、「本当にそうですね」。
あちこちに愛がある。
ここは、愛を盛り上げてくれるリストランテである。
こんな夜は、この上ない。
Convivialiteコンビビアリテ。
会食の楽しみとはこのことだね。
SNSにはあげないでね
日記 ,