時々悲しくなるときがある

食べ歩き ,

  • 7a

FBで料理をアップしていると、時々悲しくなるときがある。
料理や食材の種類によって、「いいね」の数が違うからである。
肉料理やすしの写真、あるいは庶民的な料理や高級食材を乗せた時は反応が高いが、割烹の野菜料理とかフレンチの魚料理などは少ない。
まあ、僕の文章や写真技術の拙さも影響しているかとも思われるが、とても淋しい。


寂しさと共に、自惚れも呼ぶ。
ウケる料理や写真を載せたくなる衝動に駆られるのである。
SNS.とは基本的に「自慢媒体」であるから致し方ないのだが、プロの食べ手としては、やりすぎてはいけません。


今回の料理は、「辻留」の「そばめし」である。
大好きな料理で、冬が到来すると、上海蟹やフグよりこちらである。
恐らく今回もウケないだろうなあと、思いつつも、上げてみた。
焼いた鯛の身を細かくして、米に混ぜ、分からない程度に酒を入れた昆布だしで炊く。
そしてご飯、そば、ご飯、そばと器に重ねて蒸し、熱々の一番だしを注いだ料理である。
ご飯とそばだけなのであるが、朴訥さの中から豊かな味がゆっくりと膨らんで、目覚めだす。
隠された鯛の滋味だろうか。米に染み入った昆布のうま味だろうか。
そばの香りの中に、ふくよかな甘味が忍び入って、なんとも幸せな気分を運んで来る。
気品が漂う佳趣なる味わいに、充足のため息をつく。
ゆっくりと、そばを手繰り、ご飯を汁とともにすすり込み、「ふうっ」吐息をついては、心を温める。

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