朝目覚めると、うがいをして白湯を飲む。

そして次に、オリーブ油を器に少し注いで、飲む。

飲むのは新油搾りたて無濾過のポリフェモーロである。

青いトマトの香りがするこの新油は、日々の体調を教えてくれる。

調子がいいときは、トマトやペッパー、アーモンドの香りが漂ってきて、その味わいのふくよかさと共に、体に精気を吹き込んで行く。

しかし疲れ気味な日は、甘い香りを感じるだけで、複雑な香りは感じない。

舌の上を流れ、ゆっくりと喉に落ちゆく黄緑色の液体に癒されはするが、自分の体が、まだその恵みを受け取れぬ状態であることを知る。

それなら力をつけようと思い立ち、オリーブ油をまた１０ccほど注ぎ、岩塩を混ぜて飲む。

するとどうだろう。

弱った感覚が、みるみる目覚め、動き出そうとするではないか。

自然なのである。

良質のヴァージンオイルには、都会生活で錆び付いた体が、自然と会話を交わし始める鍵が隠されている。

だから朝一番で飲み、自分の体をオリーブ油に問う。

料理に使うときは、調味料として考える。

好きなのは、火をかけないフライパンにトマトの薄切りとオイルを入れ、リングイネを茹でる。

茹で上がり40秒前に、フライパンに火をつけ、音が出たら茹で汁を大匙一杯入れて乳化させ、茹でたスパゲッティを入れて火を止め、皿に盛る。

塩は茹で汁に入れた塩だけで、胡椒もかけない。

ここに例の新油をたらりとかけまわして食べる。

この料理は、元イタリア代表ストライカー、フィリッポ・インザーギの好物だったと聞いたことがある。

口一杯に香るトマトに、オリーブ油の青いトマトの香りが抱き合って、目を閉じれば、大地に広がるトマト畑の只中に立っている。