巨大な塩の塊を差し出された。
焼き固められた塩の塊を、ナイフで剥がしていく。
中から現れたのは、昆布に巻かれた見事な車海老である。
「今まではメインにお肉を出していたんですけど、魚介にしようと思いまして」
そう相原シェフは言われた。
「サンプリシテ」のスペシャリテは魚料理である。
前菜の魚を使ったシャルキュトリー! からメインの前まで、唯一無二の魚料理が我々を喜ばす。
そうメインも魚であっていい。
パリの「Le Duc」のように、魚のフランス料理ならあそこだねという店なのだから。
塩釜から出された海老は、皿の上で輝いている。
「どう私って綺麗?」と、自慢げにオレンジを帯びた赤い肉体が艶やかに鎮座している。
もう手で持って食べよう。
頭を外し、殻をむいて胴体にかじりつく。
昆布で守られていたせいであろう。
中心が半生に加熱さ海老は、うっすらとまとった塩気が、甘みが際立たせている。
それは薄化粧をした少女が、一瞬見せた色気のように、胸を突く。
胴体を食べたらミソである。
頭をそのままかぶりつき、ちゅるちゅると味噌を吸い出す。
濃密な味噌が下に歯茎に、上顎にこびりつく。
すかさず残しておいた海老の尻尾あたりを噛み、ミソの風味と合わせてやる。
その時、濃厚と淡味が抱き合って、一瞬気が遠くなるような恍惚が来た。
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