クレソン

食べ歩き , 日記 ,

野菜に勇気をもらった。
長崎県「すすきだファーム」から届いたクレソンである。
山の中腹、天空の畑にて自然農法で育てられたクレソンである。
茎が太い。
通常売られているクレソンの二倍はあるだろう。
噛めばパシュッと、クレソンの命が弾け飛ぶ。
パシュッ。パシュッ。
鋭い香気が口を満たし、鼻に抜けていく。
目を閉じれば、遠く眼下に町を見下ろす、薄田さんの畑に立っている。
一年中湧き水が出て、自生の木や草、虫や動物と共存する畑の空気が、漂ってきた。
クレソンは、人間には気を許さないぞという辛味が舌を刺すが、噛んでいくとかすかな甘みが滲み出る。
葉は、山の空気をそのまま装ったような精気があって、体を浄化していく。
生きてきたというクレソンの尊厳が、胸を打つ。
自然をないがしろにして、今しっぺ返しをくらっている人間を叱る。
先が見えないと嘆く、人間を叱る。
噛むほどに、味わうほどに、クレソンに叱られ、激励される。
そうして心が、ゆっくりと清らかになっていく。