魚も肉も骨際の肉がうまい。
口の中で骨から肉をはがそうとする刹那、生物が命の雄叫びを上げる。
その道理をふまえて切られた鱧の刺身を、口に運ぶ。
しこしこと身を噛みしだくと、じわりと滋味が溢れ出す。
ざぶん。
昆布の旨味のような海の豊穣が、甘味となって、波しぶきを上げる。
ああ、おいしいなあ。顔が笑ってたまらない。
これは三枚におろした鱧の皮を引き、皮側にある骨の際まで、慎重に包丁を入れ、次は断ち切って観音開きにした刺身である。
鱧の滋味に敬意を払った刺身は、旨味が舌の上で渦を巻き、僕はあわてて酒を飲んで、目を閉じた。
銀座「知映」鱧づくしの会。