飲み込んだ瞬間畑の只中にいた

食べ歩き ,

飲み込んだ瞬間、畑の真ん中に立っていた。
白いぼってりとした液体を、スプーンですくう。
口へ流し入れる。
舌と上顎で押しつぶす。
スープはゆるゆると広がり、喉元に落ちようとする。
その刹那である。
トウモロコシの香りが一斉に立ち上がって、鼻に抜けた。
畑の真ん中で、もいだばかりの生トウモロコシを噛んだ時と同じ、甘く青々しく、みずみずしい香りが弾けた。
「まだ生きているよ!」そう叫んで、人間を驚かせる。
今までトウモロコシのポタージュを、何千回も飲んできた。
しかし、こんなにも香りの爆発を秘めたスープはない。
一瞬、これは幻だったのだろうか、と思うほどの豊かさがあって、恵への感謝が体の底から湧き上がる。
農家に頼み込み、収穫後には冷蔵庫に入れずに送ってもらい、到着後直ちに調理する。
一つは、長時間じっくりと蒸して、牛乳と合わせ、一部分は皮付きのままロティして合わせたのだという。
採れ立てトウモロコシの素晴らしさを、そのまま届けたい。
執念が結晶となった、江別「リストランテ薫」長谷川シェフの傑作である。