銀座・からく
昼限定八十食、お値打ちの鉄火丼を求めて昼食時は満席となる人気店。「づけ丼」千円は、塗りの丼によそった人肌酢飯の上に、針海苔を散らし、一晩煮切りに漬け込んだ本まぐろのそぎ切りが六切れのせられた丼。しなやかなまぐろの食感と、黒光りする煮切りと馴染んで濃厚になった赤身の味わいが、酢飯を猛然と掻き込ませる。煮あさりと合わせた「づけあさり丼」、煮穴子と合わせた「づけ穴子丼」、鯛の胡麻だれ和えと合わせた「づけ胡麻だれ丼」(いずれも千円)も人気。その他「づけ中落ち穴子丼」千五百円、づけに中落ち、イクラ、煮穴子を合わせた「特選丼」二千円。いずれも平日のみ。
浅草・弁天山美家古
ご存じ東京を代表する江戸前ずし名店の一軒。鉄火丼が消えゆく中、気軽に注文できるのは昔ながら。色深く美しいまぐろの切り身が乗る「鉄火丼」三千百五十円も誘われるが、この店ならではの「づけ丼」三千七百八十円をぜひ。丸い重には人肌酢飯が敷き詰められ、表面が茶色がかるほど漬け込んだ厚切りのまぐろが十数切れのり、周囲には、細い細いもみ海苔と千切り茗荷が配されている。まぐろを一切れ食べれば、滑らかな舌触りとともに、まぐろらしいわずかな渋みと豊かな甘み、微かな酸味が広がる。その味を一端切る茗荷のアクセントも効いている。「小づけ丼」二千百円もあり。
奥沢・入船寿司
庶民的な町並みに佇む気さくなすし屋だが、まぐろを売りにしていることでつとに有名。「鉄火丼」もその矜持の現れか五千円と高価だが、存分に上質な赤身とご飯の渾然感を味わえる。錦手の丼に盛られた鉄火丼は、酢飯の上に大きくそぎ切ったまぐろの赤身が約十切れと中落ちに、ねぎ、キュウリの千切りねぎを添えた丼。まぐろは実に身がしなやかで、噛むと味が舌にずんずんのって来る濃密さにあふれている。そしてほんのり鉄分の香りが鼻に抜けて、まぐろの赤身ならではの醍醐味あり。カウンターに座り、鉄火丼をほめながら食べていれば、ご主人が中とろの切れ端数切れを、ひょいと追加で乗せてくれたりする。そんなところも庶民的。このほか「中トロ鉄火丼」八千円、豪快な「大トロあぶり丼」一万円、大トロあぶり小丼」六千円もあり。