ご主人様おはようございます」
「おはよう。何かいい匂いが漂っているなあ」
「はい。今朝のお目覚めは。スペイン風ミネストラをご用意しております」
「バスクのあれか?」
「はい、そうでございます。時間菜園の野菜と今朝山で採って来た、根曲がり竹とワラビを入れて、生ハムの出汁で蒸し煮をしました」
もしこの料理が、毎朝食べることができたら、なんて幸せに満ちた日を送れるだろう。
何も出ていない。
野菜たちが、自らの力を溌剌と膨らましながら、仲睦まじく、座っている。
生ハムの出汁が、その姿を慈愛に満ちた目で見守っている。
人間はその静かな恵みを、心を無にしていただくだけである。
初めて食べた時に、「ああ。最後の晩餐は、これにしよう」と、直感的に思った、函館「バスク」の「季節の野菜煮」