西麻布「香宮」

酢豚を食べて、中国料理の明るい未来を語ろう

食べ歩き ,

豚好きの僕にとって酢豚は、燃えるおかずである。

酢豚といっても、昔ながらの白酢や赤酢を使った、パイナップルや野菜入りの酢豚と、豚肉だけの黒酢の酢豚があって、東京では黒酢の酢豚が主流となっている。

ただしこの黒酢バージョンは、餡の味が勝ちすぎている場合が多く、豚の味を生きていない店が多いように思う。

だからこそこの酢豚に出会ったときは小躍りしました。

なにより加熱がいい。良質のとんかつのように、肉の中心部に優しく火が通って、しっとりとしている。

噛めば、使われるもち豚のきめ細やかさの中から、肉のジュースが溢出て、思わず顔が崩れる。

脂も、甘く香りながら溶けていく。

衣は餡をまといながらも、カリカリとした部分を残し、餡は、酸味がきりりと立ちながら、丸いコクがある。

そして余韻には、豚肉の優しい風味が長くたなびく。

料理長は34歳の篠原裕幸さん。

この酢豚を食べながら、日本の中国料理の明るい未来を語ろうではないか。