豆の皮がない。
いや皮は確かにあるのだが、皮などないかのように均等柔らかい。
口に入れると、くにゃんとつぶれて豆だけの甘みが、ムースのように広がっていく。
この食感に笑い出さない人は、相当不幸な人生だったに違いない。
隣席の豆嫌いの女性は、「私今夜から豆が好きになるかもしれない」と、快活に笑っていた。
「柔らかくするなら、30分も煮ればいいのですが、水から沸騰しないように弱火で3時間煮ています」。メゼババの高山シェフはいう。
インゲン豆は、ピサの斜塔で有名なピサで収穫される「ピサの豆」。
茹でた豆にオリーブオイルをまぶし、ボッタルガを雪のように振りかける。
オリーブオイルの香りとボッタルガの塩気と出会った豆は、甘みの優しさを深めて、我々の心を溶かしながら、くにゃんとつぶれる。
メゼババ