新橋烏森口より七分、飲食街のはずれに店はある。アイヌの魔除け柱が門柱がわり。店内はアイヌ彫りの衝立などを配した郷土色あふれる内装だ。
突き出しのいくら醤油漬を肴に酒を飲んでいると、当然の如く毛蟹が一杯目の前に出される。二人前で蟹一杯。蟹を存分に食べてからほかの料理を食べる。それがこの店の流儀なのである。毎朝浜茹でして空輸された毛蟹の殻の中には、乳白色の肉がみっちりと詰まっており、口に入れたとたんに甘いジュースがほとばしる。あとはただただ無口になって身肉をせせり出し、ほおばりつくすのみ。間違いなく東京でいただく最上の毛蟹の一つである。
身をほぐして酒煎りした、そぼろ状の蟹肉を使った蟹汁、蟹サラダ、蟹雑炊も、蟹の素朴な風味が生きている。 予約すればたらばや花咲蟹の用意も。ただし天候不良のため、蟹空輸便が欠航、休業となる日もあるのでご用心。
閉店