そのとんかつは、草の匂いがした。
いやとんかつに限らず豚肉料理で、草の匂いを感じたことはない。
豚の名前は、「様似ボーク」という。
北海道の様似、完全放牧をしているジビーフと同じ牧場で、西川奈緒子さんの息子さん、雄喜さんが育てている三元豚である。
ヒレカツを噛むと、奥底に草の匂いがあった、
様似の澄んだ空気をいただいている気分になる。
ロースカツも食べた。
ヒレカツほどではないが、やはりこちらも草の匂いが微かにある。
早速西川さんにメッセージをすると、ここのところよく草を食べているのだという。
いや草を食べているから香りがあるのではないのかもしれない。
牧場内全体で、一切科学的なもの(肥料や農薬、配合飼料など)を使ってないので、この大地に100年以上根付いた風土の味なのだろう。
自然に沿って育てれば、豚肉にもテロワールの風味が生まれる。
その当たり前のことを、このとんかつは教えてくれる。
名古屋「とんかつ みとん」にて。