渋谷「大漁」閉店

茹で蛸。

食べ歩き ,

「今日は久里浜の蛸が入ってんだ。刺身食べるかい」。

居酒屋の親父が嬉しそうに聞くが、僕はすげなく断る。

やがて夜が更けると、蛸は茹でられる。

その気配を感じたらすかさず、「足2本」と頼む。

湯気を上げて登場する蛸に、沖縄の塩をちょいと付けて口に放り込む。

歯がめり込むと、甘い汁がちゅうっと出て、栗のような香りが鼻に抜けていく。

茹で立ての蛸はいけません。

生にはない甘い誘惑が、官能を刺激して、妙なコーフンを呼ぶ。それがまたいい。