北大路魯山人は、相当お茶漬けが好きだったらしい。
以前鎌倉の魯山人宅に約一年間料理人として務めた、「辻留」三代目の辻義一さんにお話を聞いたことがある。
「茶漬けといえば思い出すのは、魯山人先生です。それは大好きで、なんでも茶漬けです。やはり京都の名残があるんじゃないでしょうかね。ですが、先生の場合はぜいたく茶漬けです(笑)。
朝、茶漬けにしようかという時もありましたが、それこそぜいたくな茶漬けでした。
例えば天ぷらにするには一番いい、まきえびの生きたものを沢山いただいた時など、「天ぷらにせえ」と、おっしゃるかと思っていると、「全部酒と醤油で煮とけ」と。
それで、頭を取って佃煮ほどは辛くはせずに、煮るんです。
どうするのかと思ったら、あくる日の朝にご飯の上に載せて、わさびを置いて、お茶かけています。
それはうまいですよ(笑)」。
この話を聞いて以来、食べたくて仕方なかった。
実は去年「辻留」で特別に作っていただいたのだが、また今年も作っていただいた。
うっすらと醤油味がついたえびは、優しい甘みを忍ばせ、ご飯のあまみと手を結ぶ。
いささか雅な雰囲気が漂って、実にうまい。
途中から香のものも参加させて、食感や味の変化を加えてもいいのだな。
茶碗、香の物皿ともに魯山人