「毎日毎日店が終わってからこの子らと、あーでもこーでもないと試作するんやけど、10出来て、店で仕えるのは一つくらいですわ」。
そういって長谷川さんは笑った。
「でも、旬と言うものがありますやろ。だからようやく新作ができても、味が変わってきたら使いません。だから命が数日いうんもあるんです」。
串カツと言う料理を極めた、店主長谷川さん67歳の言葉である。
いや本人にとっては極めていないのだろう。だからだから日々食材を探し求め、新しい串カツを開発するのである。
その串カツは、噛んだ瞬間、顔が崩れ、唸り、身体の力が抜ける。
軽やかでいながら、食材の香りと味わいが、生き生きと口の中で爆発する。
オランダ製最高級ラードは、香りが甘く、コクがあって、胃にもたれることがない。噛んだ瞬間に、ふうっと甘い香りが抜けていく。
パンは、品川のある会社に特注してパン粉にし、串によって薄くつけたり厚くつけたりする。
それぞれの種は、一流の天ぷら屋と同じ上質なものを使い、温度を微妙に調整しながら、揚げていく。
なにしろ、串カツを口でしごくようにして食べ、串に残ったわずかな衣もおいしいのである。
種も考え抜かれている
胡麻豆腐は、カリッとした衣を突き破った瞬間に現れる胡麻の香りと、園もっちりと優しく崩れゆく食感との対比に、目が細くなるが、市販の胡麻豆腐では柔らかすぎるので、自ら練っているという。
噛んだ途端に、絹さやの青々しい香りが抜けるベーコン巻きは、ベーコンの燻製の香りと相性がなんともいいが、これも作り手に頼み、特別に燻香を高めたベーコンォ作っているのだという。
ホワイトマッシュルームを入れたクリームコロッケは、揚げられるギリギリの固さに留めて、歯を入れると熱々のクリームがとろりと流れ出る。
すべての串に関して、理想はなにかと突き詰めた味がある。
素材の質は極めて高いが、それだけに頼らず、もっと香りを出すにはどうしたらいいか。相性のいいものは? 元の素材を活かすものは? 衣とのバランスは? などなど考え抜かれているので、味に揺るぎがない。
それでは、全28串を紹介する。
① 海老オクラ春巻き レモンと塩
② ホタテ半生 ソース
③ エビと鯛とチーズをイカとホタテのすり身で包み、さらに生湯葉と大葉でくるんだ串
④ 牛ヘレ 芥子ソースで
⑤ 筍と木の芽 醤油ソースで
⑥ 活き車エビ
⑦ レンコンカレーミンチ詰め
⑧ 豚の肩ロース紫蘇巻き
⑨ 牛ミンチとゴボウ
⑩ 蛤 エシャロットの白ワインビネガーマリネ乗せ
⑪ 里芋 蟹の身
⑫ 玉葱
⑬ トウモロコシ
⑭ クリームチーズとエリンギ
⑮ 三つ葉のキス巻き
⑯ 蕗 ウニ乗せ 〜串休めの茶そば〜
⑰ クリームコロッケ ホワイトマッシュルーム
⑱ 椎茸肉詰め
⑲ 伝助穴子 白髪葱
⑳ 絹さやベーコン巻き
21 胡麻豆腐
22 ソラマメ
23 鯛の白子
24 うすい豆の団子
25 活稚鮎
26 しめじ豚巻き
27 餅
28 苺のジャムかけ
芦屋あーぼんにて
芦屋あーぼんにて
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