おそらくご主人は70代中ばだろう。
11席の店を、ひとりで切り盛りされている。
客は、昼時を過ぎても、次々と入ってきて、常に満席である。
客の大半は、A定食(フライ盛り合わせと生姜焼き)かB定食(フライ盛り合わせとハンバーグ)のどちらかを頼む。
常に満席なので、空いた席に座れば前の客が食べた皿が残されている。
1.煮込みハンバーグか生姜焼きを深皿に入れ、生卵を割り入れ、皿ごとガス台にかけて、蓋をする
2.フライを揚げる。
3.皿を下げ、一部を洗う。
4.「ごめんなさいね」と言って、布巾で各自の前のカウンターを拭く。
5.鍋の開け卵の具合を確かめる。
6.フライを揚げ切る。
7.冷蔵庫からボットを出し、水を注ぐ。
8.スープをスープカップに注ぐ。深皿の受け皿を用意する。
7.スープと水をおく。
8.付け合わせのサラダにドレッシングをかける。
9.フライを盛り付け、タルタルをかけ、配る
10、ハンバーグか生姜焼きを置いて「お待たせしました」という。
その間、先に帰る客の勘定をする、皿を随時洗うなどの仕事を絶えず行う。
これだけの人数を次々とこなすのに、水は常に注ぎ、スープも熱々を注いて、注ぎ置いたものを用意したりはしない。
創業はわからないが、おそらく何千日も、同じことを繰り返してきたのだろう。
動きに無駄がなく、逡巡もない。
どちらの定食も650円。
食べログもミシュランもガイドブックも無縁だが、市井の人の小さな幸せを担ってきた食堂は、今日も店を開けている。けい