辛いっ。
細平打そばをスズっとたぐると、舌が上顎が、「痛っ」と、叫ぶ。
甘いつけ汁の向こうから、辛味大根おろし汁がやってきては、口の中を殴打する。
その甘みと辛味のバランスがクセになる。
これはある種の、良性マゾヒズムである。
そば界のバンジージャンプである。
そばを手繰るたびに、味覚が叱咤され、神経が引き締められる。
ビールを飲んだら、舌がビリビリする。
これでも夏大根の辛さの半分くらいだという。
二日酔いだったが、一気に昨日の酒が逃げていった。
最初は皆、「辛い、辛い」と言いながらも、箸を持つ手がとまらない。いや加速する。
こりゃあクセになるわ。