粕汁とは慈愛である。
ぐじのアラと骨でとった出汁に、白岳仙の酒粕を溶き、焼きぐじをを忍ばせる、
「近所の農家が作ってくれたカブと金時人参、矢田部ネキの青いところを入れ,白い部分は焼いて入れてあります」。
若き料理人,田中俊佑さんは、ゆっくりとした口調で説明された。
吸い口には柚子、天には柚子味噌が配されている。
一口飲んで,ため息がまろびでた。
無意識から生まれた,充足のため息である。
滋養が満ちていくのを感じた,本能の言葉である。
ぐじを噛み、カブに歯を入れ,人参をネギを食べるたびに,ため息が漏れる。
もう言葉はいらない。
目をつぶり、静かに、ゆっくりと、粕汁に抱きしめられていくだけだ。
福井の田舎、名田庄「崇」にて。