築地6丁目の建物には

日記 ,

「京橋區小田原町二丁目1の3」。
築地6丁目の建物には、昔の名残が掲げられていた。
京橋區とは、明治11年から昭和22年まで指定されていた区である。
関東大震災によって建て替えられ、戦災と再開発から免れたこの一帯には、もう都内では見ることがなくなった、木造三軒長屋と銅板三軒長屋が、昔の姿のまま息づいている。
銅板三軒長屋の前には、モルタル三軒長屋があるが、残念ながら半分は、ビルに改築中である。
この一帯は、築地市場関係者及び築地で働いていた人たちが住まわれている場所だという。
今年いっぱいで築地がなくなれば、この土地を離れていくのだろうか。
昔の記憶を、人々の知恵を、博物館ではなく、唯一現在進行形として伝える場所は、いよいよ取り壊される運命にあるのだろうか。
おそらく何度も再開発の話はあっただろう。
今の基準から考えれば、効率が悪い点もあるだろう。
だが宿主は、昔ながらの快適を選んだ。
ビルの谷間に残された、懐かしい光景の前に佇み、胸にせりあがる暖かさをかみしめる。