知的好奇心を刺激された。

食べ歩き ,

今年初めていったレストランの中で、最も刺激的だったかもしれない。
それほどまでに、知的好奇心を刺激された。
ここには我々が思うインド料理の範疇を超えた、新たな天体がある。
スパイスの意味を問い、健やかなる料理の意義を体感する時間がある。
「スパイスラボトーキョー」。
銀座にできた新しいインド料理店である。
しかしメニュー開いてもカレーはない。
タンドリーチキンもない。
日本の食材をインドの伝統的なスパイスを多用して生かしながら、巧みにわさびや味噌も忍ばせる。
得てして外国料理に日本の調味料などを使うと、無理を感じることがあるのだが、この店の料理には一切なく、自然に馴染んでいる。
一皿に様々な要素や香りが盛り込まれているが、散漫にならず、すっきりと調和している。
あたかもヨガの名人のような、力をいなしながら心を捉える自然体が、どの皿にも存在している。
生ターメリック、フェンネル、クミン、グリーンカルダモンから、メース、サフラン。さらには希少なローズペダルやベティビエルの根のカースなど、様々なスパイスが使われている。
しかしスパイスの目的は、単なる味や香りではない。
調和である。
体の調和を整える。味や香りの調和を整える。
アーユルヴェダに則って、温と冷のスパイスや食材を組み合わせて、バランスを取り、味の均整美を作り出す。
その基本精神を熟知しているからこそ、わさびや味噌を使っても、味を丸く収められるのだろう。
カリカリに加熱したレンズ豆には、炭とココナッツ、トマトとクミン、アボカドとコリアンダーという3色のチャツネが添えられる。
レンズ豆の優しい甘みと、三種の各チャツネが呼びかけ答える。
あくまでも優美に、抱き合おうとする。
インド料理に色気を感じたのは初めてである。
あるいは、トマト水で作ったラッサムにズワイガニを浮かべ、帆立とコリアンダーを加えたスープは、どこまでもエレガントである。
料理長のインド人のデジャス・ソヴァニシェフは、AMANのスーシェフやnomaをはじめとして各国料理の修行もある人だという。
お話ししたが、とても穏やかで誠実そうな方だった。
現代的フランス料理に行く気分でインド料理店にいく。
そんな日は近い。
「スパイスラボトーキョー」すべての料理は、