町の冷やし中華は、威張らない。
クラゲやエビ、カニ、豪華な食材で飾り立てて、威張ろうとはしない.。

「龍朋」も潔く、胡瓜に錦糸卵、叉焼と、具はいたってシンプルである。
だが具材が少ない分、ごまかしはきかないことも知っている。
太く切られた叉焼は、肉を噛みしめる喜びがあり、切り立ての胡瓜からは、みずみずしいエキスが弾け、幅広の薄焼き玉子は、黄身の甘みに富んで、笑顔を作る。
そして、ツユが素晴らしい。
素のまま飲めるほど優しく、甘味と酸味のバランスが絶妙で、しつこくない。
「配分もだけど、温度が大切なの。少しでも温むとくどくなる」と、お母さんは言っていた。
ツユだけでなく、皿も冷やし、麺も冷水で締める。
こうして最上の状態で客席に運ばれる。
町の冷やし中華は、具材では威張らない。
だがこの冷やし中華こそ、日本の心意気が詰まった味だと、世界に威張りたい。