甘エビをそっと噛むと

日記 ,

甘エビをそっと噛むと、いたいけな甘みが広がった。
そこへココナッツの甘い香りが漂って、抱きすくめる。
味と香りの二重奏が、静かに響きあう。
卵は優しい甘みを広げ、全体を丸く、穏やかにする。
色香を伴った優美と、懐かしいような温かさが溶け合って、しみじみと美味しい。
「スリオラ」の「ココナッツが香る甘えびのフラン バジルのピューレ」である。
本多シェフによると、フランを出すと、「オヤッ」という顔をする人が多いという。
「フラン」という料理は確かに、スペイン料理の店より、フランス料理店で出会うことが多い。
そのため、フランス料理が編み出した手法だと思ってしまう。
しかし卵液を型に入れて蒸しあげた、いわば西洋茶碗蒸しの「フラン」という料理は、名前も含めてスペインが発祥なのである。
日本人だけがいうプリンの原型プディングは、なんとなくフランと似ているが、どうやら出自が違うらしい。
プデイングは広義的に蒸し料理を指し、腸詰のことを言ったらしい。
たしかに「Pudding」は、血入りソーセージの意味もあり、語源とされるラテン語のは「Boutullus」は、「Boudin」と似ているね。
とにかくフランは、正統スペイン料理なのである。
一方「Flan」は、扁平なケーキ類という意味が元だという。
ソーセージから、各種蒸し物料理になったプリンと、平べったいケーキ類からフランと呼ばれることとなったフランは、煮て非なるものか。