六本木「新北海園」  閉店

牛挽き肉炒めたまこ掛けご飯 千円。

食べ歩き ,

牛挽き肉炒めたまこ掛けご飯 千円。

すきやきに生玉子は欠かせない。
熱い肉を冷ましてくれることもあるが、濃い甘辛味のついた牛肉の味わいを滑らかにしてくれる。
牛丼も同様に、生玉子をかけたほうがうまいと思う。味わいが丸くなり、モソモソとした食感がやわらぎ、混じりあった煮汁と玉子がご飯にからんで、複雑味が増す。
そんな、玉子と牛肉とご飯の、仲むつまじい関係に、中国料理の世界で出会えるのが、「新北海園」の昼である。

ラードを多用しない、油を控えた、あっさりとした風味の北京料理と、内蔵料理、飲茶が魅力の同店の昼は、四種の料理を合わせた定食と、五〜六種の麺やご飯料理が、週変わりで登場する。場所がやや不便なのにかかわらず、昼飯時を過ぎても盛況なのは、変化に富んだ品揃えと、毎日食べても飽きないような、力強く暖かい、惣菜料理がラインナップされているからだろう。
そんなメニューの中で、時折登場して、人気を呼んでいるのが、「牛挽き肉炒めたまこ掛けご飯」である。

肉を薄切りにし、よく叩いて出来た挽き肉を、微塵にした玉葱とともに炒め、醤油、オイスターソース、砂糖で味をつけ、ご飯の上にかけて、グリンピースを散らし、真ん中に生玉子の黄身を落とした丼で、中華風牛丼とでも呼びたい、親しみ感が漂う料理である。
牛挽き肉炒めは、ご飯にのせる関係で、やや濃いめの味付けだが、くどくなく、後口のキレがいい。そこに玉子の黄身がからむ。

最初に黄身を潰し、よくよく混ぜ込んで食べると、甘辛い挽き肉炒めの味に玉子の甘みがからんで、味わいが膨らみ、俄然うまくなる。
辛さを好むなら。豆板醤を皿の縁につけ、少しずつ混ぜ込んで食べるのもいい。

ご主人でもある料理長、趙漢東さんによれば、中国ではこうして料理に生玉子をのせて食べることはないが、昼に活力の湧く料理をと、去年考えたのだそうだ。

確かに食べ終わった後の充実感は、昼から精力的な活動が出来そうだ。また、牛丼屋に入るのが抵抗ある女性とも、牛丼のダイナミズムを共有できそうだ。
最後に蛇足ながら、この料理にはレンゲがついてくるが、箸で食べた方がうまい。

皿に口を近づけ、箸でかき込むようにして食べると、丼を食べるスピード感がグンと増してうまくなる。ただし、食べている姿はあまり上品でなく、女性にはすすめられないのだが。

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