中野「ぎょうざ菜館」 閉店

小さくとも餃子は皮が命。

食べ歩き ,

焼 き 餃 子 八 百 円 
いま東京は、様々な餃子であふれている。
にんにく餃子、カレー風味餃子、博多風鉄鍋餃子、フカヒレ入りスープ餃子、セロリ餃子、極辛の辣辛餃子、蝦餃と呼ぶ海老入り蒸し餃子、四川風紅油餃子、チーズ餃子、餃子鍋・・・。と百花撩乱である。
しかもほとんどの店が、行列まで出来るほどの盛況で、まさに、餃子の群雄割拠時代、といえよう。

そんな中、次世代を担う人気者としての役割を果たすのではないか、とかねがね目をつけているのが、

「大阪風餃子」である。
東京の読者の中にも、大阪で「点天」、「天平」、「兄ちゃん」、「南平」などの店で、初めて小さくパリッとした餃子を食べ、
「いくらでも食べられてしまう、こんな餃子があるとは知らなかった」。と驚いた人も多いはずだ。一番の人気店「点天」の餃子も、近頃東京のデパートへ進出果たしたことだし、間違いなく「大阪風餃子」の時代は来る。しかし、店がない。

唯一東京で、出会えるのが、ここ「ぎょうざ菜館」なのである。

中野駅前の飲食店街の路地で、カウンター八席の小体な店を構える、店主、石 俊子さんは、大阪で食べて衝撃を受け、以来研究を重ね、苦心して、この店を開いたという。
そんな焼き餃子は一人前十四個。注文して五分ほどで、香ばしい匂いを漂わせながら、七個ずつ、寄り添うようにくっついて出てくる。
一口大の餃子を、酢醤油につけて口に放りこむと、すぐさまカリッ、パリリッ、サクサク、と軽快な音が口の中で響きあう。十回ほど噛んだかと思うと、もう口の中からなくなるが、手は、次の餃子へと箸を伸ばしている。
小さいながら白菜、ニラ、挽き肉のバランスがとれた味わいに加え、少量入れられた唐辛子が後をひく。さらに困ったことに、ビールを飲みながらつまんでいると、いくらでも入ってしまい、気がつくと三〜四人前食べてしまうことだ。

よく「餃子の命は皮にある」。という。それはむっちりとした、弾力のある皮を指していう言葉で、この小さき餃子にはあてはまらないようにも思う。しかし、御主人によれば、一番苦労したのは、独特の歯触りを生み出す、極薄の皮を作り出すことであったという。
やはり、「餃子の命は皮」。なのだ。

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