六本木「ブーケ・ド・フランス」

深さと愛。

食べ歩き ,

ここにはフランス料理のエスプリがある。
いつ行っても、異国食文化への深さと愛を受け止めることができる
例えば主菜の「豚足のサントムヌー風」である。
ルイ16世はフランス革命が勃発して、家族とともにパリのテュイルリー宮殿に幽閉状態におかれていたが、王妃マリー・アントワネットの実家があるオーストリアへの亡命が計画されました。
ルイ16世は逃避行中に、「以前サント=ムヌーで食べた豚足料理が食べたい」と言い出し、立ち寄って名物の豚足料理を食べたために時間がかかってしまいました。
食後に馬車を進めたが、食事に時間をかけたために追手に追いつかれ、少し先のヴァレンヌで、マリー・アントワネットとともに捕獲されてしまった。
そんな逸話の残る料理が、メニューにある。
キャベツのブレゼの上に鎮座した豚足は、マスタードが塗られ、パン粉を被せられてロティされている。
パン粉の香ばしさとマスタードの辛味の中から、豚足のコラーゲンが現れて口の中を甘く占拠する。
この味なら、ルイ16世の臣下たちも王様を思いとどまらせることはできなかっただろう。
絞首台に送られてもルイ16世は豚足を食べたことを、後悔しなかっただろう。
主菜だけでない。
突き出しの豚のリエットも、前菜のしっかりと焼きこまれて香ばしい「寒鯖のタルト」も、堂々たる量が出されるデセールのガレット・デ・ロワも、小菓子のしっかりと苦いキャラメル三種も、すべてがフランスである。
フランスのエスプリに満ちている。
六本木「ブーケ・ド・フランス」にて。