余呉「徳山鮓」

熊の咆哮と沈黙VOL1

食べ歩き ,

熊の咆哮と沈黙VOL1
熊の手である。
普通は濃い味で炊かれるが、徳山さんはわざと醤油も砂糖も使わず、淡い淡いあたりで炊かれた。
熊の手が持つ優しさを出したかったのだろう。
ぐにゃり。ふわり。くにゅくにゅ。
手の平や指が内包したコラーゲンが、歯と歯の間で、甘く身悶える。
それは口の中に止まることなく、静かに消えていく。
甘美な余韻だけを残して。
余呉「徳山鮓」にて