海藻に生かされる。

食べ歩き ,

海藻たちは生きていた。
コリッ.。クリリ。ヌルッ。コリン。
口の中で様々な食感がこだまする。
まだ海底や岩盤に根を張りながら、海流に抗い、陽の光に向かって一日何センチも伸び続ける自分の生命力を、食感という形に変えて、叫ぶ。
この海藻たちに比べれば、都会のスーパーで得られるものは、ミイラに近いだろう。
わかめ、めかぶ、クロモ、ムカデ、青海苔、補陀落、海ぞうめん。
海女さん、大井七世美さんがフィンもつけずに素潜りし、目前の東尋坊の海で引き抜いてきた海藻たちである。
わかめは鍋に入れた瞬間に緑となり、薄いのにコリコリとした食感を響かせる。
青海苔は、さっと湯に潜らせてから鯛の刺身を巻いて食べた。
磯の香りと鯛の甘味が抱き合って、目をつぶれば鯛が、海藻の間を泰然自若としながら泳いでいる。
この海藻たちは、噛むほどに、食べるほどに、生かされていることを、心に刻みこむ。
福井 三国海岸「大井七世美さんの家」にて