武雄温泉「あん梅」のご主人は、笑顔がいい。
人懐こそうな笑顔で、今日のオススメを聞くと、つい頼んでしまう。
そこへ女将さんが、お客の気持ちの半歩先を読んだ、気遣いのサービスをしてくれるもんだから、なんとも居心地がいい。
極上の魚や野菜に、銘酒が揃い、器もとびきりだから酒が進みすぎて困るばい。
突き出しの、テナガダコの煮物とつる菜のおひたしからしてうまかね。
タコの皮下のコラーゲンがぐりんと甘く、つる菜はねっとり舌に粘りつく。そいで今日の刺身盛り合わせは、コハダにコチ、アジにアナゴにアオリイカときたもんだ。中でもコチはがうまいとね。
くりっと歯が入りゃ、じっとり甘い。すいませんもう一本。
お次は香ばしい鯛せんべい。鯛の身を叩いて叩いて揚げたもんよ。上品な海老煎餅といいった気配があって、ああ香ばしい。さらにはコチ肝の蒸したのに、白磁に生えるそら豆蒸し。蒸したそら豆は、優しく口の中で崩れて、まあるく甘い。
エツの唐揚げも頼んでやれ。小さき魚の淡く拙い旨味に目を細めてもう一本。
ああ次は、すっぽんの肝煮に魚の肝煮、小さな小さなサヨリの卵巣が、モチモチとして優しく甘い。
ここらで牛肉。山椒と玉ねぎ巻きのすき煮で燗酒を。締めは生ワラビの味噌汁ちこうよれ。
「あん梅」さん、あなたはどうしてこんなに、こちらのツボを突いて来るの?
嬉しかね。