東京とんかつ会議211回 鶯谷 「かつ平 」ロースカツライス1500円 とん汁300円
【肉3油3衣3キャベツ3ソース2ご飯2味噌汁3お新香3特記なし合計22点】各項目3点満点特記1点総計25点満点
鶯谷坂下にあって、いつも「鍵屋」に行く際に気になっていた店である。今回お題となってようやく行くことができた。
どの町にもありそうな、街のとんかつ屋さんという佇まいの店に入ると、カウンター九席の店内は、古びてはいるが、清潔感に富み、こざっぱりとしている。
「こちらは古いのですか?」と、ご主人に聞いてみた。
頭に手拭いを被り、白衣を着た、推定40代だと思われる主人が答える。
「古いというか、細々と長くやっているだけです」。
かつ前として、ビールにおひたし、もずく酢を頼む。
するともずくは合わせ地を作り、味見をし、ほうれん草を茹で始めた。
「ロースカツライス」には、ご飯とお新香がつく。
しかしこのおつまみの作る姿を見て、豚汁も頼むことにした。
ご主人の所作がいい。
刻む、加熱する、器を出す。
常に目の前を綺麗にしながら、無駄なくスムーズに仕事している姿が美しい。
ロースカツライスを頼み、「ご飯どれくらいですか?」と、聞くと
「丼におつけします」。
『では半分にしてください」。そうお願いすると、
「それではお茶碗でおつけしますね。足りなかったら言ってください」と、答えられた
肉を取り出し掃除をし、塩を振られ、衣をつけて、揚げ始める。途端、店内にラードの甘い香りが立ち込め始めた。
揚げる音が小さい。
低温からじっくりと揚げているのだろう。
案の定現れた衣は、淡い茶色だった。
おそらく糖度の低い衣を使われているに違いない。
衣は、実に油切れがよく、サクサクと痛快な音を立てながら、弾けていく。肉はきめ細かく、脂の甘い香りが、ラードの香りと抱き合って口の中を満たす。
そのままで十分うまいとんかつである。
味噌汁はワカメと豚汁が選べるが、豚汁にした。普段豚汁は、トンカツと味がぶつかるってしつこくなるので、今日頼むことが少ない。
しかし豚汁を作る姿を見ていて、これはいいに違いないと、思った。
冷えた汁を温め、下拵えした肉を入れ、玉ねぎを刻んで入れ、三つ葉を最後に入れる。
その間二度ほど味見されていた。
実はこれも、珍しい。
丁寧に作られた豚汁には、脂が浮かんでいない。牛蒡、大根、にんじんなどの根菜もない。
味噌の香り高く、すっきりとして、とんかつの相性としての役目を果たしている。
暇を見ては千切りされているキャベツはみずみずしく、カブと胡瓜の糠漬けは、必要にして十分である。
「おいしかったです。ごちそうさまでした」。
帰り際に声をかけると
「お暑い中ありがとうございました。お気をつけてお帰りください」と、声をかけられた。
長年、誠実な仕事をされながら、良心的な値段でおいしいとんかつを出されてきたのだろう。
店を出ると、久々にいいとんかつ屋に出会えた喜びが満ちていった
山本22点 河田20点