東京とんかつ会議109 浜松町「かつ正」上ロースかつ定食1550円
【肉3衣3油2キャベツ2ソース3御飯2味噌汁2お新香2特記なし19点 各項目3点満点特記1点総計25点満点】
ビルの地下でご主人が一人で孤軍奮闘する、小体な新しき店である。浜松町は、殿堂入りした「のもと家」のほか、すでに会議でも取り上げた「むさしや芝大門店」、老舗格の「燕楽」、「とんかつ大門檍」と、都内とんかつ激戦区となっている。
「かつ正」のご主人は、水道橋他にある「かつ吉」ご出身であるというが、独自の考えでやられているのだろう。衣は修業先ほど粗めではなく細か目で、肉にぴったりと密着している。
その肉はしっとりとして、甘い香りと味わいに満ちていて素晴らしい。背脂をかなり掃除してから衣をつけ揚げられているようだが、脂の香りが肉に溶け込んでいて食欲がわく。
惜しむらくは、揚げ油があっさりとしてコクと香りが薄いことで、もしラードを使われればさらに魅力をますのではと思った。
都内でもヘルシー志向をうたって米油やリノール油などを使う店があるが、それは我々食べる側の知識不足も加担しているのではないだろうか。健全な豚から丁寧に取られたラードなら、精製された油より健康的ある。それにいざとんかつを食べようと思う人が、ヘルシー志向を意識するのだろうか? という疑問もある。
脇役陣では、ソースがほどよくスパイシーで香り高く、カツにかけるとご飯を恋しくさせたのが良かったが、なめこと豆腐、みつばの赤だしのうま味の淡さや、出来合いの山牛蒡、胡瓜の柴漬け、野沢菜で間に合わせているところが、やや寂しかった。
お一人でやられているので、なかなか手がまわらないだろうが、誠実そうなお人柄に見えたので、ぜひ脇役陣も向上させて、素晴らしきとんかつ定食を作っていってほしいと思う。
閉店