東京とんかつ会議 第104回 武蔵野 ロースかつ (定食1000円)
【肉2油2衣2キャベツ2ソース2御飯2味噌汁2お新香1特記廉価 合計16点】各項目3点満点特記1点総計25点満点
「双葉」「ぽん多」「蓬莱屋」は、上野のとんかつ御三家として知られた名店である。このうち「双葉」だけは現存しない。その「双葉」のあった場所の2軒隣に「武蔵野」はある。聞けば1948年創業だそうで、「双葉」が盛んで訪れていた時代にもあったのだが、失礼ながら今までその存在を全く知らなかった。
「ああ、上野はとんかつの街なんだなあ」。店に入るなり感じた。お客さんは、ほぼひとり客で初老の男性である。みなさん長年通っているのだろう。座りなり、メニューも見ずに注文をする。「ヒレカツ、ご飯大盛り」「盛り合わせ、タルタル抜きでキャベツ大盛り、ご飯小さめ」。手慣れたものである。
メニューを見れば、ロースもヒレも、エビフライもカキフライも千円と、潔い。ロースは、通常のロースカツと「小・肥後あそび豚ロース」(どちらも千円)とある。聞けば肥後あそび豚の方は小さめだという。しばし悩んだ挙句、両方頼んでしまった。
思えばとんかつ人生初のロースかつ2人前である。食べられるだろうか? 不安な気持ちは、先に通常のロースカツが運ばれてきた瞬間に増幅した。でかい。今まで都内のとんかつ屋は100軒ほど回ったが、千円で食べることのできるとんかつの中では最大である。
食べれば噛み締めがいのある肉で、甘い香りもある。油はラードか揚げ油の甘い香りとコクがある。強火で揚げきっているので油切れは良いが、やや揚げ過ぎか衣は少し剥がれかかっている。しかしこの値段を考えれば上々ではないだろうか。僕がとんかつ好き学生だったら、間違いなくこの「武蔵野」に通い続けるなあ。
遅れて登場した「肥後あそび豚」は中心をだいぶレアに残した揚げかたである。通常のロースカツの肉よりキメが細かく、柔らかさもある。しかしレアな加熱加減で肉の旨味が十分に引き出されていないようである
お新香は野沢菜とシソの実の醤油づけと寂しいが、ご飯、なめこの味噌汁、キャベツ共に上々。甘めのソースも後口のいやらしさがない。よし今度来た時は、今度来た時には「肥後あそび豚のよく揚げで」と注文してみよう。