東京とんかつ会議 第89回大森「丸一」 とんかつ定食(ロース)(1500円)

とんかつ会議 ,

東京とんかつ会議 第89回  大森「丸一」 とんかつ定食(ロース)(1500円)
[肉2、衣2、油3、キャベツ2、ソース3、ご飯2、新香2、味噌汁2 特記なし 計18点]
各項目3点 特記1点 満点25点

 どの街にでも見かけるような、庶民的なとんかつ屋の風情である。引き戸をがらりと開ければ、「いらっしゃいませ」と、明るい声がかけられる。ご夫婦でやられているようで、ご主人はもくもくよカツを揚げ続け、奥さんは快活な声をかけながら、テキパキとサービスをしている。その姿と声が清々しい。
 とんかつが出来る前に、ビールの小瓶とお新香で過ごそうと頼んだら、「定職にもお新香がつきますが、よろしいですか?」と尋ねられた。嬉しいですね。
目の前の客に注文を取っている。「はい。お待たせしました。お決まりですか?」
この店の賑わいは、廉価で質の高いとんかつだろうが、おかみさんの接客にもよるものが多いと思う。
 肉は、豚の甘い香り十分で、おそらくラードだろう。中粗の衣からも甘い香りが漂う。高温で揚げ切っているため、油切れもいいが、やや突っ込みすぎたか肉のしっとり感が薄い部分もあり、衣もはがれている箇所がある。脂の溶け具合も良く、1,500円のとんかつ定食としては、十二分にお値打ちである。
 ご飯、これでもかと根菜が入った豚汁、キュリと大根の浅漬けもいい。キャベツの切り方は粗いが、都内随一の量が盛られ、甘い。ソースは甘口と辛口があるが、甘口の方がよく練られた味で丸くおいしい。お新香をご飯に移して、その小皿に甘口ソースを注ぎ、からしを溶いて。カツをつけると調子がいい。
 塩はアンデスの塩とひんじゃの塩。小体な店だが、全てがすっきりして気持ちがいい。とんかつを食べ終えて店を出ようとすると、「いつもどうもありがとうございました。お待たせしました」。おかみさんの明るい声で見送られた。