札幌に行くと変態に会いたくなる。

食べ歩き ,

札幌に行くと、変態に会いたくなる。
今度はイタリアン「薫」である。
熊野地鶏とウニのタリオリーニをいただいた。
鶏と水だけでとったブロードにタリオリーニを浸からせ、上にウニを載せてある。
食べるとどうだろう。
ウニを使った料理というのは、大抵ウニの自己主張が強い。
「ウニだ。ウニだ。ウニだ」と、言ってくるのだが、この皿からは、そんな言葉は聞こえない。
ウニは鶏のブロードによって、丸く静かになる。
主張の角が取れて、優しくなる。
そうこの料理は、鶏のブロードが主役なのである。
鶏のブロードの中で、タリオリーニが気分良さそうに横たわる。
そこにウニは、品のある、ささやかな甘みを添えているだけなのである。
僕はやられた。心が溶けた。
しっかりとメイクした女性が、化粧を落とした時に見せる清廉な笑顔のように。