新いくらは健気である。

食べ歩き ,

新いくらは健気である。
まだ拙い香りと甘みを精一杯に伝えようしている気配があって、そこがどうにも健気に思えてならない。
「BOLT」の仲田シェフは、そんな新いくらを、ゲヴェルツトラミネール に漬け込んだ。
ライチやカモミールの香りをまとった新いくらは、ほんのり色気を帯びて、エレガントにつぶれゆく。
そこへすかさずゲヴェルツトラミネール を流し込む。
フロマージュブランで作ったセルベルドカニュの油分か、いくらの香りを弱め、ワインに溶けて、優雅に笑う。
そこへビーバーブレッドのサワーブレッドが、滑り込む。
またワインを飲みたくなる。
またいくらを食べたくなる。
まだ夜は、始まったばかりである。