庶民にあって才光る。

食べ歩き ,

その男は、大衆居酒屋の店主である。
「しんちゃん」は、一人で料理を作る。
ラーメン、うどん、チャーハン、煮魚、唐揚げなど次々に作り、お客さんのお腹を満たしていく。
知人に連れて行かれた日、腰を抜かした。
割烹も驚く魚の質と料理を、バラエテイに富んで揃えている。
すっかり気に入ったが、知人との約束を守り、今まで店名を明かしてはいない。
最も店名を明かしても、店の電話には出ないので、予約はできないけどね。
ある日、新保さんを連れて行った。
新保さんも、すっかり気に入り、やがて肉もおろすようになっていく。
彼の才能は、魚料理だけではなかった。
肉料理でも活かして、フレンチ顔まけの料理を作る。
すべてが、独自に考えた料理である。
そしてついにその日が来た。
サカエヤプラスで、七本槍の酒粕を食べさせて育てた後藤牧場の近江牛を使い、料理をしたのである。
かっぱ、力こぶ、はらみ、トンビ、すねなど、普段飲食店では使われない部位の肉を、見事に昇華させた。
肉料理だけではない、粕汁を分解した汁気のない粕汁や三種の加熱方法のキャベツと牛肉、玉ねぎと牛脂のムースといった料理でも魅了する。
唯一無二のソースと付け合わせを考え、唸らせた。
スバ抜けた発想と理論的な仕事は、間違いなくトップクラスだが、まだ世間には知られていない。