すしは、つけ台の上に、ふわりと着地した。
薄茶色の、赤酢を使った酢飯の上で、マグロの赤身が艶やかに光っている。さあ早く食べろと、誘いかける。
優しくつかんで口に運ぶ。赤身の血潮と酢飯の酸味と甘みがぴたりと合って、口の中で響きあい、心が震える。
ううむと、唸って微笑むと、職人と目があった
彼女は、軽く会釈をして、感謝の意を示した。
僕が知る限り、三人目の女性すし職人である。
華奢な指で握られた鮨は、口の中に入ると、凛々しい味を膨らます。
そのギャップがいい。繊細な手つきから生まれる、たくましさがいい。
マコガレイ、小肌、アジ、蛸、炙った鰹、いさき、鮪、キス、車海老、鳥貝、カスゴ、鮑、穴子。
握りが進むほどに、握り寿司の正道が、胸の内にすとんと落ちて、高揚していく。
白身は、この酢飯に合うよう、少し熟成させ、マグロの赤身は、小ぶりな鮪で、すっきりとした味わいを目指す。
きりりと酢が効いた、いなせな師匠のすしとは微妙に異なり、酢も握りも穏やかに感じるのは、気のせいか。
竹内さんが、これから自分のすしをどう深めていくのか。
通わなくちゃいけないなあ。