大変危険なTKG

食べ歩き ,

大変危険なTKGである。
一口、口に運んだ瞬間に、崩れ落ちた。
顔が崩れ、体は弛緩し、心が笑う。
鶏脂のコク、バターの香り、ご飯の甘味、卵の甘味、醤油の甘味が、渾然一体となって舌を包み、それぞれの香りが混沌となって、鼻腔をくすぐる。
地鶏の卵を割って溶く。
鶏脂を加えた、ご飯が炊き上がる。
釜の蓋を取り、バターを入れる。
卵を混ぜる。
醤油をかけて混ぜる。
さあ出来た。召し上がれ。
はふはふと、熱々を頬張れば、皆の顔に幸せが宿る。
わざと固めに炊かれたご飯は、卵や鶏脂、バターや醤油をまといながら、一粒一粒が自立して、存在を主張する。
それをゆっくりゆっくりと噛みしめる。
一膳目はそのままで。
二膳目は、鶏を鉄板で焼いた後の、こびりついた焼きカスを集め、そのアミノ酸の固まりを、ふりかけにして。
三膳目は、鶏スープをかけて。
ああ、もうやめて。
これは、TKGではない。
リゾットである。
日本人の琴線を鷲掴みにする、リゾットである。
曙橋「鳥勝」にて