いやあ。こんな危険な鍋だとは知りませんでした。

「鍋プロクラス講義」最後の授業は、「特別な鍋を食らう」であります。

一つは、明石浦漁港直送「オコゼ鍋」。

なにしろ昆布だしに、ブツに切ったオコゼと豆腐だけしか入れないという、潔い鍋であります。

まずはアラから入れて、煮えた頃合いに出して齧りつく。いやしゃぶり尽くす。

もうは箸なんか使ってられないよ。

皮をべろん、唇にゅるり、一心不乱で食べて恍惚となるのです。

次は、胴体。

身はふわりと口の中で崩れて、品のある甘さが口の中に流れていく。

品があるのだが、奥底に野生の凛々しさが潜んでいる。

気品ある女性に見え隠れする、野生の影といった風情で、止らない。

こりゃ、魚鍋界の王、フグの地位も危ういのではないか。

そう思える、魔界の味なのであります。

そして、肝。

さっと、それこそさっと火を通して、そのまま食べる。

ああいけません。オコゼの肝はいけません。

これまたねっとりと甘い滋味がありながら、さらりとした品格もある。

最後の晩餐は、オコゼの肝をお願いしてもいいでしょうか。

そして、出汁である。

オコゼのうま味がにじみ出た潮汁は、鯛ともフグともクエとも違う。

はあ。一すすりしただけで思わず出る充足のため息よ．

丸く、優しく、深く、海の豊穣を含んで、命の神秘を感じる汁である。

まずは茶碗にご飯を少しだけ盛って、汁かけご飯。

次にご飯を入れてお雑炊。

大変危険な鍋であります。
もう一つの鍋は、エビベジ使った野菜のしゃぶしゃぶ。

これも禁断。後日報告。