列車鍋

食べ歩き ,

誰が列車の中で、鍋を食べる時代が来ることを予想しただろう。
誰が列車の中で、生の伊勢海老や鯛を、熱々の出汁に入れる時が来ると考えただろう。
再びトワイライトエクスプレス瑞風である。
二晩目の夕食は、「菊乃井」によるものだった。
一つ一つが意味のある八寸に始まり、豪華な向付と続き、肉料理と流れて、鍋が運ばれた。
鍋のつゆの中には、伊勢海老の頭と鯛の頭、ネギなどが入っている。
さらにこの鍋自体が優れものである。
まずいくら揺れても、鍋縁にカエシがあるので、つゆが飛び出さない。
さらに火力調節が、リモートなのである。
小さな丸い装置の表面をスワイプすると、火力が変わる。
ここに伊勢海老やら鯛やら山菜やら筍やらを入れて、散々楽しむわけだな。
個室で酒鍋をつつきながら、馬鹿話で笑い、時折車窓の外へ目をやっては酒を交わす。
こりゃあなかなかできません。
鍋奉行協会会長としても、初めての経験である。
締めはまた優秀で、乾麺が運ばれ、鍋の中に入れる。
特殊開発された乾麺らしく、極細麺は、生麺のような食感となり、細いがゆえに、お腹いっぱいでもつるつると入ってしまうのであった。
おそらく周遊地の鍋も、これからは出るだろう。
山口のふぐちりや神戸のすき焼き、鳥取のカニすきだけでなく、岡山のみかん鍋や広島の美酒鍋、島根のへかやき鍋もやつて欲しいな。
PR