共食とは、あらゆる動物の中で人間だけが行ってきた行為である。
共に同じものを同じ場で食べ、共感しあい、美味しいものを食べる喜びを、生き生かされている価値と感謝を分かち合う。
世界中の美食に精通した辻静雄氏は、「人と人の出会いをつなぐのが、料理なのです。おいしければなお良い。楽しいな。一緒にいてよかったな。そう思える相手と一緒に食事することが「おいしい食事」なのです」。と言い
ジャン・レノは、映画「シェフ」にコメントを寄せて、「私は美味しいものが大好きです。食べること自体も大切ですが、その食事を誰かと共有することが大切。食卓では友情が芽生えます。食事を共にする人や、料理を振る舞う相手とは、特別な関係でつながっているのです」。と述べている。
最近思うのは、「おしいものを食べること」ばかりが優先されてはいないかという気持ちです。
普段から「あそこがうまい。ここがうまい」と言って、FBにあげたり、記事にしたりするお前が何を言っているんだと、お叱りを受けそうですが、「一緒に楽しく食べる」より、「おいしいものを食べる」が優先されるのはおかしいと思う。
昨晩は、自由が丘「MONDO」で食事をしました。
ご存知のように、この店は週に一度、大テーブルに客が一堂に会し、同時スタートで一緒に食べるというスタイルを今月から取り入れています。
シェフが目の前で、料理をし、自ら客の間を回って取り分ける。
大きな塊で肉を焼き、魚は丸ごと焼く。
昨夜は僕ら5人に加えて、カップル客が3組いらっしゃいました。
「おいしいっ」。僕が顔を輝かせて宮木シャフに伝えると、一瞬にしてみなさんが心の中で頷くのがわかる。
シェフが子供のようなはにかみ顔で「ありがとうございます」といえば、皆が優しい顔で微笑む。
最後の肉料理、リムーザンの炭火焼を楽しんだ後、シェフが「もしお腹に余裕あれば、パスタいきますか?」と聞くと、皆もじもじして返答しない。そこで
「卵かけスパゲッティ食べたい人、手を上げて」というと。全員が手を上げました。
名前も知りません。カップルということに気を使って、話しかけもしません。
でも「卵かけスパゲッティ」が運ばれて、その素直なおいしさにうっとりとしながら、顔を上げると、みなさんの笑顔があった。
無言ながら目を少しだけ合わせて、微笑む。
微笑み合う。
なんと素敵な時間なのでしょう。
共食を生み出した人間の、真の営みがここにはある。
限りのない「平和」がある。
食べ物こそが世界平和に繋がると信じられる時間でもありました。
このかけがえのない時間を与えてくれた宮木シェフと田村さん、サービスのスタッフに感謝します。