偉大なピーマン。

食べ歩き ,

普段ピーマンでは驚かない。
トマトやネギ、茄子やカブなどでは様々なブランドがあって、品種改良が進んでいる。
だがピーマンは、その気配が一切ない。
きっかけは、もろきゅうだった。
山形「そね田」で出されたもろきゅうを何気なく食べて、顔が綻んだ。
甘いのである。
ガリっとかじると、うっすらとした、品のある甘さが広がったのである。
聞けば、西尾さんという方が無農薬で作られている「お日さま農園」のきゅうりだという。
「ピーマンも美味しんだよね」。
教えてくれた方がいう。
そこでワインバー「プルピエ」にいくと、ピーマンがあった。
シェフはフライパンでピーマンを丸ごとのままソテーし、上からしょっつるをかけてまぶし、チーズをすり下ろした。
ヘタを持ってかじりつく。
「ううっ」。
その瞬間唸って笑った。
ピーマンの青々しい香りが、清々しく鼻に抜けていく。
肉厚で淡い甘みがある。
種にうま味がある、
しょっつるやチーズの塩気に負けることなく、自らの味を誇らしげに舌に広げて来る。
生命力を感じるのであった。
こりゃパスタにしても美味しそうだぞと思い、「ニンニクも何も使わず、このやり方だけでパスタを作ってください」。
そう無茶振りした、
シェフは、難なくパスタに仕立ててくれる。
たぶん誰も食べたこともやったこともないだろう「Spaghetti al pepe salsa di syotturu」は、無限に食べ続けられる力を持っていた。