どの鳩とも違う邂逅だった。

食べ歩き ,

今まで何百回と、鳩を食べてきた。
しかし昨夜の鳩は、どの鳩とも違う、邂逅だった。
鳩を切る。口に運ぶ。
目前に広がる山々の漆黒を見つめながら、噛む。噛む。
猛々しい滋味が流れ出した時に、体の底でなにかが動いた。
沈黙の闇に抱かれて、鳩を食らう。

次第に、都会生活の鱗や垢が剥がれ落ち、裸になっていく。
その時突然、眠っていた野生が目覚めた。
肉を食らう。他の命を絶って自らの命を養う。
養分を得て命を長らえた感謝と、この先いつまた得られるかわからぬ不安が芽生えていく。
食への根源的な喜びと畏怖が、体の中で渦を巻く。
鼻息粗く、心拍数が高まっていく自身をおさめるかのように、息を吸い込む。
草や木々の香りを伴った清明な夜の香りが、鼻孔をながれていく。
すると今度は、鳩と同化した。
森の中で餌をついばむ鳩になっていた。
人間と鳩の間を、意識がさまよう。
これが「食べる」ということなのかもしれない。

ニセコダイニングアウトにて