二ヶ月間スペインに戻り勉強したことが

食べ歩き ,

二ヶ月間スペインに戻り勉強したことが、自分の芯を形作った礎を太くし、想いを深くしたのだろう。
銀座に移って再出発した本多シェフの料理は、前にも増してスペイン郷土料理と食材への敬意に満ち満ちて、日本のどこにもない個性を輝かしながら、僕らを官能の渦へ落とし込む。
脂がのった鰯は、軽く炙り、脂の香りとうま味を膨らましながら、命のたくましさを舌の上で爆ぜさせる。
固められて鰯となじみやすいよう敷かれたパセリのピストゥーは、青い香りを放ちながら、鰯の甘みをそっと持ち上げる。
白いかは、噛んではいけないような半生に火が通され、蓋になった豚ほほ肉ミンチのとろりとした甘み、中に詰めたジロールと椎茸の香りと共鳴する。
茸の鼻を焦らすような香りと、白イカから滲む甘い香りが抱き合って、なんとも温かい気分となる、不思議に満ちた皿である。
また手長海老のフランとブランチャは、半生に鉄板で加熱した海老と海老の出汁で作られたフランに、セロリと香菜のジュースが注がれる。
海老の優しい甘みに、セロリと香菜の香気がアクセントを加え、ジュースに潜んだ辛味が、食欲を煽る。
前菜の一部だけで、これだもの。
キャビアやクエ、フィデウアの料理のことはまた後日。
一見、シンプルに見える皿に込められた複雑な出会いが、僕らの味蕾を覚醒させ、知的好奇心をくすぐり続ける。
際めて独創的ではあるが、アイデアだけが上滑りすることなく、食材と愛を持って向き合った、誠実な料理に心が打たれる。
「スリオラ」はいま、最も通いたいレストランである。