一口飲んでため息がもれ、二口飲んで笑い出した。

食べ歩き ,

一口飲んでため息がもれ、二口飲んで笑い出した。
千歳の黄芯白菜と干貝柱のスープ。
甘みと微かなえぐみと、ほの甘い香りと。
白菜の持つすべてを、余すことなく抽出したスープが、舌を過ぎ、喉に落ち、細胞に染み渡っていく。
干貝柱のうま味をギリギリに押さえた精妙な味付けが、白菜を生かし、淡さの中に品格を生み出している。
料理をされているのだが、人間の意図を感じさせない澄んだ味わいがあって、飲むほどに白菜への愛が伝わり、心が落ちる。

前菜は貝づくし、ホンビノスの老酒漬け、厚岸産牡蠣のオイル漬け、ムール貝の酒蒸し、トリ貝とホッキの合間のような、ミゾ貝とツル菜の和え物、ホタテとトウキビの春巻。
貝の質を生かした味わいが、唸らせる。
半生に火を通したホタテと、トウモロコシの甘みがなんとあうのだろう。
見事に抱き合って、色香を放ち、コーフンさせる。

アブラガレイとカリフラワーの金沙炒めにもやられました。
奥底にたくましい滋味を持つカレイと、甘い甘い蒸しカリフラワーの取り合わせが、なんともよく、そこへココナッツやカレーの香りを含んだ金沙パウダーがアクセントする。
どの皿も、余分なうま味がなく、淡く、優しく、簡潔でいて、しみじみとした味の深さがある。
食材への深い信頼と敬意が生んだ料理には、気品があり、思いやりがあり、健やかに我々の体を上気させる。
札幌「茶月斎」にて。