脂が舌と同化した。
握りが口に滑り込んだ途端、鮭は、微笑みながら舌と絡み合い、一つとなる。
みっちりと脂を身につけていながら、きめ細かく、口に残らず、甘い記憶だけを残して、淡雪のように消えていく。
もはや脂なのか肉なのかすら分からない。
いたいけなようでいて、成熟もある。
濃厚ながら品がある。
極めの美味は、人類の英知の届かぬ遥かなる自然にいて、相反する魅力で、もてあそぶのか。
こうなりゃ、顔が緩み、だらしなく、「うまいなあ」としかいえない状態だろうな。
札幌「和喜智」、「時知らずのヅケ」である。