西荻窪「いしはら¥

ラーメン前の極地点。

食べ歩き ,

最初は、ラーメン屋だった。

今は、おいしいラーメンもいただける居酒屋である。

カウンターに座ると、目の前にはラーメンダレと香味油の入ったポットが置かれ、奥には麺窯とスープの入った寸胴鍋が配置されている。

ラーメン屋ならどこでも見かける風景だろう。

だが奥の壁に掲げられた品書きには、魚介を中心とした肴がずらりと手書きされている。

知らないだけかもしれないが、こんなラーメン屋は日本中探のどこにもないだろう。

最初は、ラーメン屋だった。

浜田山でワンタン麺が有名な店として、名を馳せていた。

ところが創業者の気まぐれか、ラーメン屋は他の人間に任せて、近くでおでん屋を始めた。

それまたいいおでん屋で、東京風の美味しいおでんがいただけた。

やがておでん屋を締め、西荻窪でラーメン屋を始めたと聞いてでかけたら、ラーメンやワンタン麺のほかに、酒飲みを喜ばすツマミ類が数点あるではないか。

今回二十年ぶりに出かけてみると、肴がぐんと増えて、酒亭進化をしているではないか。

古い居酒屋同様、馴染みの独酌客もいて、シメにラーメンを食べずに、ちょいと飲んでは帰っていく。

焼酎のボトルもキープされていた。

蕎麦屋の蕎麦前は、種物蕎麦の具材をアレンジしたものだが、ここはわざわざ別の仕入れと仕込みをされている。

「アワビの刺身、白子ポン酢、ヤリイカの煮付けで、立山を二杯呑んだ。立山のお燗をお願いすると、温度はどれくらいにしますか? と、ご主人が聞いてくれた」。

これだけ書くと、立派な居酒屋である。

いい気分になって、もっと酒と肴を頼みたくなったが、今夜は二軒目、暴走はしないでおこう。

ほろ酔い気分で、煮干しの香りが効いた醤油ラーメンをいただき、箸をおいた。