神谷町「デプスブリアンツ」

 ペストジェノベーゼ。<リグーリア州郷土料理の会>その1

食べ歩き ,

<リグーリア州郷土料理の会>その1
ジェノベーゼのパスタといえば、バジル、ニンニク、松の実、オリーブオイル、チーズを使った、北イタリア、リグーリア州のジェノヴァ風パスタである。
そう多くの日本人は思っている
だがイタリアでは、ジェノベーゼパスタいえば、玉ねぎと肉の煮込みを使ったパスタを指す。
しかも郷土料理として有名なのは、ナポリである。
言い伝えによると、ジェノヴァ出身の名料理人の作る肉煮込みが美味しくて、その名がついたという話が残っている。
あの誰もが知っているバジルのソースパスタは、ペストジェノベーゼのパスタ、あるいは、パスタレジェッロと言わなくてはいけないという。
「作り方で肝心なのは、フープロやミキサーではなく、すり鉢を使うことなんです。向こうではモンターユという大理石のすり鉢を使います」と、奥野シェフが教えてくれた。
フープロやミキサーでは、すりつぶしではなく切っているため、香りが出ない。
余計な水分も出てしまう。
さすがに大理石はなかったので、別のすり鉢で丹念にあたってくれたペストを、パスタの上に乗せ、インゲンを添えてくれた。
パスタは、リグーリアの特産品であるリングイネを少し細くした、バベッタである。
鮮やかな緑に輝くペーストを、パスタに混ぜて食べてみる。
とたんに地中海から吹く温暖な風と、太陽に恵まれた地で育つバジル畑の中に立っていた。
爽やかな香りを持った風が吹き抜けていく。
なにより、香りが高い。
鼻腔や口中の汚れを拭い去るような香りがあって、食べるごとに清められる。
目が醒める清々しさに心打たれながら、フォークを置いた。
 
神谷町「デプスブリアンツ」にて